『夢にご用心！』第3回　〜おはなしの　せかい（3回連載）

「おはなしの　せかい」は、以前に子ども向けの読み物を会員紙にて連載していた読み物に若干手を入れて再掲載したものです。不定期（半月〜1か月ペース）で更新していくつもりです。全体像はこちらからご確認ください。※本サイトはリンクフリーですが、掲載しております文章などの著作権は「つなワタリ」に帰属します。無断転載、再配信等は一切お断りします。No reproduction or republication without written permission.

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【前回までのあらすじ】
漢字テストを翌日にひかえたアオイは、夢に現れたおじさんに「協力すればテストでいい点数が取れる」と言われ、夢の世界にいたアオイの “そっくりさん” と入れかわりに夢の世界に連れてこられてしまった。アオイは機械を通じて “そっくりさん” にもう一度入れかわってもらうようにお願いしたのだが、 “そっくりさん” はまったくアオイの言葉に耳をかそうとしなかった。アオイはこのまま夢の世界に閉じこめられてしまうのか!?

 

 

しばらくの間、 “そっくりさん” が現れるのを待っていたアオイだったが、やがて眠ってしまった。

 

「……やっぱり夢じゃないんだ。」

 

しばらくして、目をさましたアオイは、そこが自分の部屋ではないことに気づいて、つぶやいた。おじさんも “そっくりさん” も現れないので、アオイはうす暗い部屋の中でずっとひとりぼっちだった。

 

「あ～あ。本当なら今ごろサクラと遊んでいるはずなのになぁ。なんとか帰る方法はないのかなぁ。」

 

アオイは現実の世界に帰るための手がかりを見つけようと、部屋の中を探しはじめた。

 

ガサガサ　ゴソゴソ

ガサガサ　ゴソゴソ

 

 

「な、なにをやっているんだ！」

とつぜんアオイを夢の世界に連れてきたおじさんがやってきた。

 

「どうしても現実の世界に帰りたいの。友だちのサクラがうちに泊まりに来るの。何も知らない　 “そっくりさん” がサクラとケンカしたらこまるの！」

「ブレスレットでつながっているから、友だちとも仲良くやれるさ。」

 

「でも、このブレスレットをはずすと、二度と現実の世界に戻れなくなるんでしょ？　“そっくりさん” が言ってたわ。」

 

「そんなことを言ったのか。そのブレスレットは二人をつなぐ大切な機械だ。本当は二人ともはずしてしまえば、夢と現実がまた入れかわってしまうものなのさ。」

 

「じゃ、二人ともはずせば、わたしは現実の世界に帰れるの!?」

 

「そういうことだ。しかし “そっくりさん” は絶対にはずしたりしない。あきらめることだ。」

 

おじさんはそう言って部屋から出ていってしまった。

 

「ダメか～。今ごろはサクラと “そっくりさん” が楽しく遊んでいるんだろうなぁ。」

 

＊

 

そのころ、 “そっくりさん” とサクラはブレスレットの話をしていた。

 

「ねぇねぇ、アオイ！　そのブレスレットどうしたの？　わたし　にもつけさせてよ！」

 

「ダメ！　絶対にはずしちゃいけない幸せのブレスレットなの！」

 

「え～ ！　だったら、なおさら してみたいよぉ！　貸して！」

 

「絶対にダメ！　そんなことより、もう遅いから寝ようよ。」

 

“そっくりさん” はサクラの話をさえぎって、部屋の電気を消して布団にもぐってしまった。

 

「もうっ！　ケチ～！」

 

しぶしぶ布団に入ったサクラだったが、どうしてもブレスレットのことが気になって、なかなか寝つけないでいた。すると、しばらくして  “そっくりさん” の布団から寝息が聞こえはじめた。

 

「よ～し、いまがチャンス！」

 

サクラは気づかれないように布団をめくり、“そっくりさん” の腕からブレスレットをはずした。そのとたんブレスレットが強い光を放った。

 

「きゃぁ～～～！　

　ま、まぶしい～～～～～!!」

 

サクラがブレスレットをはずしたと同時に、夢の世界にいるアオイのブレスレットも光り出した。

「えっ？　ブレスレットが光って いる！　もしかして！」

アオイは思い切ってブレスレットをはずしてみた。

 

 

　ヒュ～～～～～～～～～～～～ン

 

一瞬、目の前が真っ暗になった。アオイが気づくと、そこは布団の中だった。そして布団をめくると友だちのサクラがとてもあわてた顔をしていた。

「ア、アオイ……ごめんね。ど、どうしてもブレスレットをつけたかったの。でも、はずしたら　急に光って、消えちゃったの！」

 

「ブレスレットなんか、どうでもいいの！　

　サクラ、ありがとう！　

　おかげで助かったわ！」

「えっ？　助かった!?　ど、どういうこと？」

「ううん、なんでもない！　とにかくサクラ、大好きよ！　一生友だちでいようね！」　

　
きょとんとしているサクラにアオイは思いっきり抱きついた。

 

（おしまい）