つなワタリ@捨て身の「プロ無謀家」(@27watari)です。
言葉の雑学を掘り下げた記事です。今回は「ご遠慮ください」。そもそも「ご遠慮ください」って、どういう意味があるのでしょうか? 少しならOKということでしょうか? それとも「ダメ! 禁止!」という言葉を控えめに、慎ましく表現した言葉なのでしょうか? ちなみに「遠慮」という言葉は、平安時代から使われてきたそうです。
言葉の由来について興味がある人……言葉の由来って面白いですよね。私は大好きです。さらに言葉を調べたり、派生した謎を掘り下げていくと、さまざまな歴史や風俗、文化などを知ることもできます。今回は「ご遠慮ください」。ツイッターで話題になたので、少し掘り下げてみました。
【目次】本記事の内容
衝撃告白! 「ご遠慮ください」って、「少しならOK」だと思っていた!
ツイッターで衝撃告白が話題になりました。
それが、これです。
う…そ……だろ…?これ、ネタじゃなくてガチで言ってる!???義務教育の敗北すぎておばちゃんはびっくりだよ pic.twitter.com/3TgEsdzCzp
— うさもも贅沢な女 (@uuusamomomo) April 23, 2023
念のために文章を残しておきます。
ここでしか言えないので報告させてくださ
い。。。
ご遠慮ください、はできればしないでくれたら
ありがたいくらいの意味で絶対だめだとは思っ
ていませんでした(ᐡ o̴̶̷᷄ ̫ ̫ o̴̶̷̥᷅ ᐡ)
例えば、写真撮影はご遠慮くださいって書いて
あったらたくさん撮るのはやめてインスタに上
げる1、2枚だけにしてて、、でもそれ非常識な
やつだと思われてたかもしれないんですよね
これからは気をつけます、、、
マシュマロ
投稿主の言葉「義務教育の敗北」については意味不明ですが、「ご遠慮ください」の解釈を取り上げたツイートは大きな話題になっています。
◯「ご遠慮ください」の解釈に関するネットの声
じつは投稿主への批判もありましたが、「ご遠慮ください」の解釈に関するネットの声をピックアップしてみました。
<「ご遠慮ください」の解釈に関するネットの声>
・はっきり禁止と書くと「客に命令するな」「お前に強制力はない」と面倒な客に連日絡まれるし、他の真っ当なお客様の迷惑にもなるから「ご遠慮ください」と使う。しかし一定層には「遠慮でいいのか(少しは)」と取られる
・だからSNSで『写真はご遠慮ください』の場所が、何故か上がってて大炎上したりしてるのか。『ご遠慮ください』が『禁止ですよ!』の意味を知らない人が居るのか
・日本語能力が無いのはもちろん大問題ですけど、そもそも「できればしないでくれたらありがたい」だとしても、相手の気持ちを無視して撮影強行してしまう非人道性が大いに問題アリなんですよねぇ…
・私は発育の段階できちんと学べましたが、グレーゾーン含め、発達障害(ASDなど)には無意味な言葉だと思いました。察しろはもう美学でもなんでもないですよ。あれはこう、これはこうとはっきり書かないとこれからは通用しないんじゃないですかね。言葉のアップデートが求められる時代が来たのかも
・わたしASDですけど、さすがにわかりますわ…。これ「察しろ」ではなく「定型文」かと思います…..
・「ご遠慮願います」「御遠慮下さい」が「禁止」っていうのは割と難しいラインでもある。「遠慮なさらないで、」と言った言葉もあるし。日本人は直接断ることをせず遠回しに伝えてしまうので海外の方や言葉をあまり知らない方にとっても少し厄介ですよね
・遠慮「他人に気を配って、言動を慎み控えること。 事情や状況を考えて、辞退すること。 断ったりやめたりすることを婉曲に言う語。 席をはずすこと」。 結局「やめる」以外の何ものでもない
・ご遠慮くださいとかお控えくださいの難しさ。例えば塩分控えめと言ったらゼロではなくてちょっとは塩分があると考えたら、「お控えください」は完全に禁止ではなくて写真撮影の余地があると考えてしまうんでしょうね
・「控えおろう!」の一言で控えないと斬られるよ。今の人は時代劇観てないか
・禁止と書きたいけど、強く言うと「規則で決まってんのか?!」「なんで撮っちゃいけないんだよ!?」とか絡んでくる人もいるので、トラブルを避ける為に文言を緩くしてるんだよね。私は撮影禁止や立ち入り禁止は強い「禁止」表現で良いと思う
・「今日は遠慮しとくよ」は「今日はやめとくよ」ということなので、『ご遠慮ください』は『おやめください』の意味だと思ってた..
・結局こういう回りくどい言い方や解釈の不一致が出るから禁止です!の方がいいと思う
・ぶっちゃけさ「ご遠慮ください」って書くくらいなら「お止めください」とかもう言いきった方が良くない? 検索かけて「できればやめてほしい」って出て来たけど結局は「やるな」って事でしょ? 日本人のそういう「察しろ」って言うのが誤解を生むんでしょ?
・日本語特有の「奥ゆかしさ」が裏目に出てる気もしますね
・会社で採用活動してますが、最近は行間を読めない学生が増えていると採用担当の人が言っていました。なので、直接的な表現をする方が良いです
・ご遠慮ください=やめてくださいが通じないのは日本語教育が変わってきてる気がしますね…
・高齢者の割合が多い気もしますが、残念ながら100人に1人くらいの感覚で居ます。ご遠慮頂けない場合が増えたので、最近はおやめくださいとか書いてますね……
・遠慮がちに撮れば良いと思ったんですかね?
・子どもの頃は、「ご遠慮ください」は禁止だとは思っていませんでした。いつから知ったかは覚えてません…
・ご遠慮ください=禁止しますの婉曲表現
・もう丁寧語とか通じないんだね
・”遠慮がちに○○する”という言葉と混同して覚えてしまったんだな
・ご遠慮とご配慮を間違えてる感じ…
・お止め下さいにしとくか…
・義務教育というよりも、周囲の大人との対話が減り、表現の仕方や言葉使いを教わる相手が大人との生の会話からではなく、ほとんど校閲を受けていないネットの文章になっているのが影響していそう
・やっぱ国語はちゃんと習うべきなんやなって
・尊敬語丁寧語とか今の授業で習わないのか…はたまた忘れてしまったのかは不明だけれど、「ご遠慮下さい」は「しないで下さい」だから
・信じられない
・きちんと「撮影禁止です」と書けば通じるんだし、そういう文化を知らなければこれは仕方ないかなって
・「いやぁ私なんかが撮っちゃっていいんですかね?なんかすみませんね。じゃあ少しだけ失礼して…」などと遠慮がちな態度でなら撮っていいって思ってそうですね
・ご遠慮くださいって日本語はないとも聞きました(勘違いかもしれませんが)。作っているサイトでは明確に「禁止」という言葉を使っています。画像への直接リンクは禁止みたいな
・著しい読解力の欠如でしょうね
・『ご遠慮下さい』の看板のすぐ側で禁止行為をやってる人、今までは外国の観光客だと思ってたけど、理解力のない日本人の可能性の方が高そうな気がしてきた
・う~~ん、驚き
・自分の常識は必ずしも他人の常識では無いのだ
・婉曲表現の弊害って感じしますがねえ〰️。全てを学校で教えるわけではないし正直間違えてしまうのはしょうがないと思う
・最近はおやめ下さいとか禁止事項って書いてるの多いっすよね
・言葉を知らないって怖いわ
・家庭教育の敗北やと思う
・遠慮してくれ=やめてくれって事だからまあそうよね。近年、言葉が通じない、意思疎通できない若者を痛感してたが、やはり気のせいじゃないな。行き過ぎた多様化は混乱するだけなのよね
・それ分かる…日本語ってめんどくさい。初めから写真撮影やめて下さいって書いて欲しい
・暗黙の了解ではなくなってきてるのでしょうね。お仕事でよく使う「難しい」は言う側は「できません」の意ですが受け取る側は人によって違いますし
・日々勉強しながら生きていくんだってw
・非常識な人ってわかっててわざとやってるんだとばかり思ってた
・電車内の通話はご遠慮ください、とかを無視している大人を見て子供は育ってますからねー
・でも僕たちはどこで「ご遠慮下さい」の意味を学習したのだろうか。教育機関で教えてもらった記憶はない
・ストレートにそのまんまの意味で捉える人だっていておかしくない
・遠慮の意味が「他人に対して、言葉や行動をひかえめにすること。」だからあながち間違ってはないだろ
・そもそも「禁止」を体裁よく苦情防止も兼ねて「遠慮」と書く(言う)時点で客任せにした店側の敗北。日本語の曖昧さと良さの両代表格の言葉かと
・遠回しな婉曲表現ばかりの京都に行って読解力を鍛えるといいのでは?
・遠慮の意味が、『他人に対して、言葉や行動をひかえめにすること』なのである意味正しい日本語としては間違っては無い
・ ・ ・
実際、そもそもの投稿がネタのように感じてしまいますが、たしかに「ご遠慮ください」の拘束力が低下を感じさせられる場面が増えてきていると感じます。
「遠慮」という言葉は平安時代から使われていた
「遠慮」とは、『遠く先までも見通す』という意味を持った言葉で、平安時代から使われていました。その後、室町時代からは『差し控える・自粛』といった意味で使われるようになりました。さらに江戸時代には『謹慎刑』『外出制限(自重)する』といったことにも使われるようになったようです。
言葉というのは時代とともに変化していきますので、今回のように『少しならOKだけど、ほどほどにね!』という形で受け止められるのもアリかもしれません。
「ご遠慮ください」は相手に謹んでお願いする尊敬語
現在のところ、一般的には相手に対して「やらないでくださいね」といったお願いだと認識している人がかなり多いようです。
実際に下記のような「ご遠慮ください」は、禁止をお願いしているのが伝わってくるでしょう。
・ここから先の立ち入りはご遠慮ください
・敷地内での喫煙はご遠慮ください
・中古品につき、神経質な方のご購入はご遠慮ください
しかし、つぎのような場合はどうでしょうか?
・車内での携帯電話の通話はご遠慮ください
・プライバシー及び個人情報を保護するため館内での撮影・録音はご遠慮ください
・SNS等への投稿はご遠慮ください
これは意外と守られてないような印象です。「禁止じゃないでしょ」「ほかでは問題ないよ」「人が写ってなければいいでしょ」「緊急の電話なら仕方ないでしょ」的な理由で守らないといった感じです。そう考えると、言葉も状況でも変わってくるともいえるでしょう。
「ご遠慮ください」を英語で表現する場合は?
「ご遠慮ください」を英語で伝える場合はどう話せばいいのでしょうか。
言葉のニュアンスを含んで伝える場合、「Please refrain from~動詞+ing」となります。
しかしこれは言葉づらに合わせた英文でので、「Please don’t ~動詞」「You are not allowed to ~動詞」「No~動詞+ing」などの表現を使った方がトラブル回避になりそうです。
では、法的に「マスクなしはご遠慮ください」はどうなるのか?
コロナで問題となったマスク問題。そういえば飛行機から追い出されて話題になった人もいました。餃子店でのトラブルもありましたね。
このような「ご遠慮ください」は法的にどう扱われるのでしょうか?
じつは『温泉旅館(被告人)がお客さん(原告)を出禁にした』民事訴訟というのがありました。平成29年1月12日に静岡地方裁判所沼津支部によって出された判決は、「温泉旅館(被告人)が行った出入り禁止処分に対し、出入り禁止処分は不法行為とはいえない」と結論づけ、原告からの損害賠償の請求は棄却となりました。
理由は「公共の建物ではない建物については,その所有者ないし管理者は,法令等に反しない限り,その所有ないし管理する建物内に,誰を立ち入らせて誰を立ち入らせないかを自由に決定することができるのが原則である」という考え方に基づいています。
つまり「ご遠慮ください」を破ると、判例に従えば勝ち目はありません。
<まとめ>「ご遠慮ください」は禁止であり、法的にも強制力あり
「ご遠慮ください」の受け取り方は各自の自由でしょうが、やはり「禁止」の意味を持っており、もし「ご遠慮ください」を破ってトラブルに発展して裁判になった場合、勝ち目はなさそうです。
勉強になリまました。
では!