つなワタリ@捨て身の「プロ無謀家」(@27watari)です。
「法務省人権擁護局・全国人権擁護委員連合会」が発行した「第41回全国中学生人権作文コンテスト入賞作文集」が話題です。
いきなり表紙のイチバン目立つ部分に踊る「All Lives Matter」の文字が挑戦的です。意図的なのか、不勉強なのか、無知なのか、挑発なのかはわかりませんが、人権擁護局の看板を下ろしてもいいような大失態です。
【目次】本記事の内容
法務省人権擁護局は勘が悪い? ツイッターの投稿が話題に
「全国中学生人権作文コンテスト」というものが行われていることをごご存知でしょうか。
人権作文コンテストとは、日常の家庭生活や学校生活等の中で得た体験に基づく作文を書くことを通して、人権尊重の大切さや基本的人権についての理解を深め、豊かな人権感覚を身に付けてもらうことを目的として昭和53年から実施されています。
『人権についての理解を深め、豊かな人権感覚を身に付けてもらうことを目的』にしているはずですが、「第41回全国中学生人権作文コンテスト入賞作文集」の表紙を見ると、法務省人権擁護局が人権無視のスローガン「ALL LIVES MATTER」を掲げています。
この冊子の表紙がツイッターで投稿され、話題になっています。
こちらです。
東京都人権部の窓口に置いてあった『第41回全国中学生人権作文コンテスト入賞作文集』の冊子。
法務省人権擁護局が発行しているのだが、表紙に見える「All Lives Matter.」の文字。
東京都人権部にしろ法務省にしろ、勘が悪すぎる。 pic.twitter.com/AkdD6WYGSC— 百日紅 (@kmrke) August 10, 2023
「ALL LIVES MATTER」は最悪の人権無視のスローガン!
「ALL LIVES MATTER」については「BLACK LIVES MATTER」と対比された言葉で、2020年に世界的に話題になったスローガンです。
「ALL LIVES MATTER(みんなのいのちが大事である)」というスローガンは文字面的には当然のことを言っています。何一つ問題はありません。しかし、「BLACK LIVES MATTER」という現実を誤魔化す人権無視のスローガンとして有名です。
この件については説明が長くなるので、下記の記事をご覧になってください。
というわけで、”BLACK LIVES MATTER”(黒人のいのちは大事だ)にたいして、“ALL LIVES MATTER”(みんなのいのちが大事だ)と、対抗的に言い返すことはしてはならない、と僕は考える。それは差別してきたし、いまも差別する側の言い分でしかない。
引用:「黒人のいのちは大事だ」(BLACK LIVES MATTER)対「みんないのちが大事だ」(ALL LIVES MATTER)の言い合いをきっかけに、おもったこと(GQ/2020年6月9日)
https://www.gqjapan.jp/lifestyle/article/20200609-black-lives-matter-all-lives-matter
魚拓URL:https://archive.md/U4QEg
今は何百年もわたって続いてきた、黒人に対する迫害をどうにかしないといけないとき。”Black Lives Matter(黒人の命は大切だ)”っていうスローガンは、他の人の命が大切ではないっていう意味ではないんだ。この社会が明らかに黒人の命は大切にしていないってことに注目するためのものなんだよ!
引用:ビリー・アイリッシュ、”すべての命が大切”を批判「白人には最初から特権がある」(ELLE girl/020/06/01 )
https://www.ellegirl.jp/celeb/a103849/c-billie-eilish-slams-all-lives-matter-20-0601/
魚拓URL:https://archive.md/6GBzw
「All Lives Matter(すべての命が大切)」というフレーズで「Black Lives Matter(黒人の命も大切)」に対抗する問題の話に戻ろう。私はこれを白人コミュニティによる集団的なガスライティングと表現するようになった。ガスライティングとは、個人や団体がより多くの力を得るため(またはこの場合、自分の平和を保つため)、被害者の現実に疑問を抱かせる心理的虐待の一種だ。
引用:なぜ「All Lives Matter(すべての命が大切)」と言うのをやめる必要があるのか(BAZAAR/2020/06/03 )
https://www.harpersbazaar.com/jp/lifestyle/daily-life/a32749091/black-lives-matter-explained-200603-lift3/
魚拓URL:https://archive.md/5dCTp
人種を問わず、すべての命は貴重です。そういう意味では、「All Lives Matter」というのは正しいことかも知れません。
しかしアメリカ社会の中において、全ての人の命が平等に警察の横暴と体型的な人種差別によって、危険に晒されているわけではありません。そのためALMと言ってしまうと、実際に助けが必要な人々(主にアメリカ社会の中で暮らす黒人)から焦点を外してしまうので、特にアメリカでは、BLMをALMと言い換えることはできないのです。
引用:なぜ「Black Lives Matter」は、「All Lives Matter」とは言わないのか?(公務員総研/2023年7月25日)
https://koumu.in/articles/201009
魚拓URL:https://archive.md/8J97O
私は「アメリカの黒人」関係の本を読んだり研究をするだけではなく、彼らアフリカン・アメリカンと付き合ってきましたが、「アメリカの黒人」の心の痛みや差別に対する感覚というのは絶対に分からないと思っています。その中で私たちに何ができるかというと、学び知ることにより、いかに自分が柔軟に心を広く持てるかということだと思います。
引用:「差別と向き合うために」荒このみ名誉教授インタビュー(TUFS Today/2021年01月29日)
https://wp.tufs.ac.jp/tufstoday/research/21012901/
魚拓URL:https://archive.md/Bleiw
参考:
・「Black Lives Matter 運動から学ぶこと―多文化共生、サステイナビリティについて考えるために―」(東京外国語大学・連続セミナー)
https://www.tufs.ac.jp/research/seminars/blmseminar.html
魚拓URL:https://archive.md/Ik8i1
「ALL LIVES MATTER」と「BLACK LIVES MATTER」については、人権を語るにあたり、絶対に無視できない問題です。
嗚呼、それなのに……「ALL LIVES MATTER」を全面に掲げる法務省人権擁護局の異常さがわかってもらえたでしょうか。
審査員長は落合恵子氏、その他の「全国中学生人権作文コンテスト」関連情報
ちなみに「第41回全国中学生人権作文コンテスト中央大会審査員」は以下のメンバーです。
・作家(審査員長) 落合恵子
・一般社団法人日本新聞協会事務局長 林恭一
・日本放送協会解説委員室解説主幹 清永聡
・文部科学省初等中等教育局視学官 菅野和彦
・全国人権擁護委員連合会会長 内田博文
・法務省人権擁護局長 鎌田隆志
この方々が冊子のデザインまでは関知していないでしょうが、この事実をどのように考えるのでしょうか。ぜひ考えをうかがってみたいものです。
では、最後に「人権作文コンテスト」の特設サイトをご紹介します。今回はもちろん、過去の入賞作文なども読むことができます。
参考
・全国中学生人権作文コンテスト(法務省)
https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken111.html
では!