やる気を起こす方法(8) アイデンティティの獲得
・一番大切な「創作意欲」が湧かず、不安と焦燥に駆られながらも、いつまでたっても他のことにかまけている。そんなあまのじゃくな精神状態におちいる原因として「アイデンティティ・クライシス」(自己同一性の危機)が考えられる。
・「自分とはなにか」「自分はなにがしたいのか」「なにができるのか」「自分の個性とはなにか」――これらの問いかけに答え、乗り越えることが、アイデンティティの獲得である。
◆【症状】
(1)一番大事なこと(自己実現)をしないで、安易な目標に「寄り道」する。
(2)一番大事なこと(自己実現)に「猶予」を求めて先延ばしする。
(3)「無為」……何かしなくてはならないのに、何もしないでいる。
(4)「アパシー」……無気力。現実からの逃避。
◆【原因】
(1)なまけ心。……自己実現するより、遊んだり寝たりするほうがラクだなぁ。
(2)自立を恐れている。……独立して一人で戦って生きていくのは怖いなぁ。
(3)結果を恐れている。……自分には才能がないかも。失敗するかも。
(4)自分に甘えている。……どうせ自分の人生だからどーでもいいや。へっ。
(5)劣等コンプレックス。……オレって才能がないのかも。
(6)あきらめ。……自己実現なんて、無理にきまってるよ。なれるわけない。
(7)低レベルな悟り。……いいんだ。これがオレの人生なんだ。満足なんだ。
・これらをまとめて解釈すると、「マイナス思考」の裏に「自分と向き合えない」「自分を見失っている」という原因がうかがえる。ダメな自分が、自己実現したい自分をジャマしているのだ。
◆【解決方法】
・アイデンティティを獲得するには、自分が心底から実現したいことはなにかという、自分の心の奥底にあるかすかな欲求(自己実現の欲求)を、まず見つけることが重要である。そのかすかな欲求を見落とす人は自己実現にはほど遠い。
・自分の欲求にすなおであること。自分をいつわらないこと。
・自分の欲求が見つかったら、それを目的として具体的な目標を立てる。そして自分の現在の立場や、今後の展望やリスクを論理的に分析する。自分に才能があるかないか、あるいは今後、才能が伸びる可能性はあるのか見極める。リスクが大きすぎたり勝算がまったくなければ、その目標は無益である。勝算がないなら、目標(手段)を変えるか、あきらめて平凡に生きるほうが幸福である。
・「やれそうだ」と思えればしめたものだ。あとは「やるぞ!」という「意志」を持てばよい。
・とにかくやりはじめること。「やるぞ!」と思っているだけではしかたがない。やってみることで「やるぞ!」と思えるようになる。
・自分の作品と、自分自身の目標のベクトルを一致させること。
・自分を信じること。信念を持ち続けること。親が反対しようが、誰一人信じてくれなかろうが関係ない。自分を信じていれば、決してくじけることはない。「いつか必ず自分のなりたいものになれる」という「思いこみ」が「自信」である。
・自分と向き合うこと。「これまでの人生の経験や知識、すべての出来事が、今の自分を作ってきたのだ」と理解すること。
・「オレは○○なんだ」と決めること。(パラノイア、成功すれば、偉い人)
・鏡を見れば自分を客観視できる。「鏡を見たくない」と思う人は現実を直視できない人だ。不細工を気にしてもしかたがない。男は「身だしなみ」で、女は「化粧」でどうにでもなる。大事なのは「どうにかしよう」という「前向きな姿勢」である。
・プロボクサーの辰吉丈一郎さんの言葉。(健康上のリスクが少ない早い時期に引退した方がいいと言われている事に反論して)「自信とかじゃないんですよ。それぐらい自分に惚れなあかんのや。自分に惚れん限りその自分自身は絶対成長せえへんから」
◆【アイデンティティを確立できないまま作家になると】(仮説)
・デビュー後に潰れて消えてしまう。
・なまけグセがつく。筆が遅く、ノリの悪い作家になる。
・パッとしない時期が長く続く。(ジミな作品の作家が、デビューの十数年後に大バケしてヒットを飛ばすことがある。この変化は、アイデンティティの確立によるものではないだろうか?)
◆【注意】
・アイデンティティを確立しないまま一生を無事に終える人も多い。
・アイデンティティを早い時期に確立しすぎるのもよくない。なぜなら、自分を確立することは、それ以外の可能性を捨てることでもあるからだ。青春時代は「生きる目的」を見つけることが「目的」である。「生きる目的=創作」と思い込むには時期尚早であろう。夢は変化する。小中学生時代の夢を実現する人間はほとんどいないように。
◆【青い鳥症候群】
・「青い鳥症候群」……今の自分は「仮の姿」であり、「本物の自分」は別にあるはずだと思いこみ「もっと自分に適した仕事」を求めて、転職や離職を繰り返す心理。
・より高い理想を追求するのはよい。しかし、もしかするとそれは「現実逃避」や「ないものねだり」かもしれない。
・創作でなんとか食べていけるメドがつくまでは、今の仕事を辞めてはいけない。経済的自立なくして創作活動はできない。
◆【モラトリアム】
・「モラトリアム」……アイデンティティを獲得するまでの猶予期間。この期間に心が迷うことで、人はさまざまな未来へ可能性をひろげる。「迷い」は向上のモトなのだ。しかし、モラトリアムに甘えて無益に時間を蕩尽していると、やがて寿命のほうが先にきてしまう。自分の肉体や脳の働き盛りの時期を計算に入れて計画的に生きなければ、無為に人生を蕩尽するだけである。
・明確な目標が決まって、すでにモラトリアムは終わっているのに「鳴かず飛ばず」の売れない日々が続いている人は、いまが「下積み」の時期なのだ。苦しみあがきなら努力し続けるしか方法はない。あせってマイナス思考におちいるのはよく
ない。「自分は大器晩成なのだ」と楽観しよう。
・「書けない理由」が「書かない理由」である場合もある。たとえば「まだ表現するだけの力がない」「もっと文章や絵が円熟してから書(描)きたい」「まだ機が熟していない」「ある程度自分の方法論を確立してから書きたい」と感じる場合である。弁解ともとれるが、書き出さないであたためておくほうがよい場合もある。こればかりは本人にしか判断できないことで、第三者が「とにかく書け」とは言い切れない。いま書けば失敗作で終わる作品も、十年後にならミリオンセラーになるかもしれない。あるピアニストは、気が向かないときコンサートそのものを中止してしまう。たくさんの人に迷惑をかけるが、ダメだとわかっている演奏を聴衆に聴かせるよりは、誠実な決断といえるのかもしれない。
やる気を起こす方法(9) プラス思考
・クヨクヨしない。
・イライラしない。
・過去の反省はしない。
・将来に不安を持たない。楽天的に考える。
・自分の才能を信じる。
・よろこぶ習慣。
・悩まない。
・前向きに考える。
やる気を起こす方法(10) 挑戦思考
・「できない理由」を探して自己弁護をするのではなく、「可能にするにはどうするか」と考える。
・奴隷根性を捨てる。われわれは誰かに仕事をやらされているわけではない。自分のために仕事をしている人は、泣きごとやグチをこぼさない。
・高い目的、目標をもつ。困難だからこそ挑戦しがいがある。
・敵は自分だけである。
・困難にぶつかったとき「もっとゆっくりやればできるだろう」「むずかしくなってきた。もっとがんばろう」などと自分自身を励まし、よりいっそう創作に集中すること。これがすなわち「努力」である。
・「言いわけ」「泣きごと」などは「甘え」であり、集中力や意欲を低下させるだけだ。だまって行動すること。