【目次】本記事の内容
リスク
・挑戦には必ずリスクがある。
・リスクは大きすぎても、小さすぎてもいけない。ゲームに例えるなら、難しすぎてほとんど勝つ見込みのないゲームはやる気がしない。(リスク大)逆に、絶対に勝つのがわかっている簡単なゲームもまた、やる気がしない。(リスク小)
・リスクを軽視しないこと。「たいしたことはないだろう」と考えないこと。
・リスクを恐れて最初から逃げ出さないこと。リスクを回避する方法を考えること。
・リスク対応は、具体的に考えること。リスクの原因をつぶすこと。論理的に思考すること。
・予測できないリスクもある。そんなときは、変化にすばやく冷静に対応すること。実行段階で被害を最小限にとどめることができるはずだ。
・いざというときのために「次の手」を考えておくのもよい。ただし、次の手の用意に手間取ってはならない。
・よい案にはかならずリスクがある。そのリスクを具体的につぶすこと。
・リスクの少ない案は捨てる。
マクレガーのX理論、Y理論
(ダグラス・マクレガー……米国の行動科学者)。
・X理論……人間は怠け者で、強制され、命令されなければ仕事をしない。
・Y理論……人間は「条件」しだいで自ら進んで仕事をするし、責任感も持つ。
Y理論の「条件」とは
・「魅力ある目標」
・「責任」
・「自由裁量(お前にまかせる)」を与えることである。
F・ハーズバーグの二要因説
<衛生要因>…………低次の欲求
・原稿料、印税
・知的生活の充実(余暇)
・出版方針
・編集者との人間関係
・地位(現在の社会的名声)
・生活の安定
<動機づけ要因>…………高次の欲求
・達成感(仕事を成し遂げること)
・仕事そのもの(作品や、仕事そのものに満足できること)
・責任感(責任を持たされること)
・承認(認められて評価されること)
・昇進(威信の大きい地位につけること)
・成長(技能の成熟。作品の質の向上。よりプロフェッショナルへ)
・衛生要因(低次の欲求)はいくら手に入れても、さらに欲しくなり、いつまでも
満足することはない。逆に動機づけ要因(高次の欲求)は、簡単に手には入るも
のではないが、一度手にはいると大きな満足を得ることができる。
快楽主義について
《人はなぜ働くのか》
・「快」がほしい。
・金が欲しい。(報酬)
・人に認めてもらいたい。(賞賛されたい。存在を誇示したい)
・やりがいがほしい。(生きがいがほしい)
・権力や権威がほしい。(賞、役職)
・歴史に名を残したい。(名誉)
・ラクしたい。(不快を避けたい、なまけたい)
・脳にドーパミンが欲しい。(快感がほしい)
・上記の欲求は間違ってはいない。低次の欲求ではあるが、世の中のほとんどの人はこれらの報酬のために生きている。さて、ではこれらの報酬がなくなったら、あなたは創作を辞めるのだろうか? 不満だから辞める、金をくれないから辞める、人に認めてもらえないから辞める、やりがいがなくなったから辞める、権威がないから辞める、歴史に名を残せそうもないから辞める、ちっともラクじゃないから辞める、ドーパミンが出ないから辞める。――あなたにとって創作はその程度のものなのだろうか。
・社会心理学者のE・L・ディシの実験によれば「報酬が人々のもともと持っているやる気や興味、集中力を低下させてしまう」という。報酬が目的になってしまい、報酬が減ったとたんにすべての興味を失ってしまうのだ。
・報酬や評価は自律性を狂わせる。自分を見失わないように、ときどき初心に戻って、自分は本当はなんのために働くのか(創作するのか)を考えてみる必要がある。
・金に執着することはくだらない。赤ん坊がおしゃぶりに執着するようなものだ。金を目的にしてはならない。金は仕事に自然についてくる。
・脳にドーパミンを出すためだけに生きているなら、覚醒剤中毒患者といっしょで
ある。快楽は目的ではない。
ハングリー精神
・なにかが足りないという「欠乏感」があるから「欲求」が生じ「行動」に駆り立てられる。
・もう創作で食っていくしか道がない。なにがなんでもこの仕事にしがみついて生きてゆくしかない、という差し迫った「あせり」は有効だ。
・「才能」の欠乏感もハングリー精神を生む。人は自分の無力を思い知ってはじめて、それを必死になって埋めようとする。つまらない人間ほど大バケしたら強い。
・作品を完成させることでしか満たされない欲求がある。その欲求を満たそうとする気持ちが「創作意欲」である。
・デビューしても、そこで満たされてはいけない。成功しても、それで満たされてはいけない。つねに書きたいものを抱えていること。
・「私は本当に自分のできる最大限のことをやっただろうか? まだだ。だから私はいまだにハングリー精神が旺盛なんだろう」(スティーブン・スピルバーグ)
・つねにハングリーであること。これはひとつの才能である。
コミットメント(commitment)
・コミットメントとは、心底から本気になってなにかに没頭している状態のこと。仕事(創作)に没頭したり、マンガやゲームに我を忘れて熱中する(ハマる)のも「コミットしている」などという。
・コミットメント中は、モチベーション(やる気)が非常に高くなる。
・コミットメント中は、集中力が非常に高くなる。
・コミット(没頭)しなければ、創作はできない。
・イヤなことにはコミットできない。好きなことだからコミットできる。まず創作を好きになること。
・組織では、ひとりが仕事にコミットしすぎて、まわりの同僚のモチベーションを逆に下げてしまうことがある。組織の中では、自分がコミットするだけではなく、周囲を自発的に動かすテクニックが必要だ。(リーダーシップ)
・一人で執筆する作家の場合も、編集者や周囲のモチベーションを考える必要があ
る。
・仕事にコミットしすぎて家庭崩壊してはなんにもならない。家庭(基盤)がなく
ては仕事に身が入らなくなる。集中しすぎず、周囲に注意を払うこと。
◆【ワーカホリック(仕事中毒)】
・コミットメントは、危険な側面をもっている。過剰にコミットし続けると、ワーカホリック(仕事中毒)になり、「過労死」をまねく場合すらある。
・コミットすると、A10神経でドーパミンが大量に分泌されて脳が覚醒する。全身にはノルアドレナリンが行き渡り、元気に、活動的になる。これらドーパミンやノルアドレナリンは覚醒性のホルモンであり、過剰に分泌され続ければ、人はエネルギーを使い切って死んでしまう。それを適度に抑えてコントロールするのが「セロトニン」である。セロトニンの分泌により「疲労」が生まれる。だから、疲れたときは休むべきである。一回の睡眠でテンションは下がらないので、安心して寝るとよい。
《ワーカホリック(仕事中毒)の対策》
・ふだんから仕事(創作)にゆとりを持つ。
・仕事(創作)を楽しむ。
・趣味(遊び)と仕事(創作)のバランスをとる。
・冷静に自分の精神状態をながめて、自己コントロールする。(論理的思考)
・仕事(創作)への病的な執着はしない。仕事(創作)に逃避しない。
・適度に休息をいれる。
・ときどきサボる。
・さまざまな人々との交流を持つ。(ひとりぼっちはダメ)
・自分が本当になにをやりたいのかよく考える。(目的や目標が間違ってないか)
◆【バーンアウト(燃え尽き症候群)】
・コミットしていた仕事が一段落して、少し気がゆるんだとき、バーンアウト(燃え尽き症候群)におちいる場合がある。
・症状……モチベーション(やる気)の喪失、無気力、頭痛、めまい、不眠症など。
・原因……仕事への過度のコミット。目標を見失った反動。ストレス解放の反動。
・特徴……まじめでモチベーションの高い人間ほどなりやすい。
・対策……上記のワーカホリックの対策と同じ。
・一生かけてやるだけの価値ある目標(ライフワーク)であれば、バーンアウトになる可能性は少ない。
・漫画家の藤子不二雄A・F両氏がトキワ荘の時代、仕事が猛烈に忙しいにもかかわらず、正月に帰郷してしまい、まったくマンガが描けなくなって数社の原稿を落とした、という有名なエピソードがある。過度の緊張のあとの不意の気のゆるみも一因であるが、 仕事があまりにも忙しすぎて「楽しさ」よりも「苦痛」が大きくなりすぎたことが、最大の原因であろう。
・仕事が終わったら、次なる目標を見つけねばならない。つねに「次の手」を考えておこう。(次の手を考えておくのはよい。しかし次の手の準備に手間取って、今の仕事に支障があってはならない)
「忍耐力」
・アルバイトで食いつなぎながらでも、毎晩、疲れて寝てしまうまでは、コツコツと創作に没頭しよう。創作上のストレスは「快ストレス」であり脳を鍛える。
・「創作する時間がほとんどない」とイライラしてはいけない。そうしたマイナス思考は「不快ストレス」を増大させるだけである。
・「忍耐力」は、くりかえし「ストレス」に耐えることで自然に身につく。つまりストレスが「忍耐力」をつくる。(↓詳細)
・ストレスを受けると視床下部と脳下垂体を中心に、POMC(プロオピオメラノコルチン)というホルモンが合成される。この POMC が酵素で分解されて、ベータ・エンドルフィンや、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)などになる。ベータ・エンドルフィンは鎮痛作用と快感作用をもち「精神的ストレス」を解消させる。ACTHは副腎皮質ホルモンを分泌させ、全身の炎症やアレルギーといった「身体的ストレス」を解消させる。これらのプロセスは核酸に記憶され、同じストレスを感じたとき、すぐにPOMCが合成されるようになる。このプロセスが「忍耐力」の正体である。
《結論》
過酷な労働の日々に耐え、自分の身体にムチ打って作品を残した者だけが成功できる。
働きながら創作する方へ
・おまへの素質と力をもつてゐるものは
町と村の一萬人のなかになら
おそらく五人はあるだらう
それらのひとのどの人もまたどのひとも
五年のあひだにそれを大抵無くすのだ
生活のためにけづられたり
自分でそれをなくすのだ
すべての才や力といふものは
ひとにとゞ まるものでない
(宮沢賢治「春と修羅」第二集「告別」(作品第三八四番)より抜粋)
・「わたしは才能を売ることはしたくない」ということばこそ、独善とごう慢の見本である。ただちょっと頭を下げさえすればものを書くことでなんとか生活していけるのに、彼らは才能を売りたくないばかりに、秘書、セールスマン、下水道工事人、ドーナツスタンドのウェイターなどの職業を選ぶ。ところが、不幸なことに、作家が自分の才能を売るかわりにこういった世俗的な仕事を選ぶ場合は、生活してゆくのがやっとなのである。そして一時しのぎの仕事がいつしか定職になってしまい、ペンをとるのは週末か仕事を終えて帰宅したのちの夜の時間だけということになってしまう。こうなると、疲れていることもあって、本来ならじゅうぶん楽にこなせる短編ですら、満足に仕上げられなくなってしまう。一度は、作家として身を立てるチャンスに出会いながら、身を落とすことを恐れるあまりに、二度と作家として道を歩めなくなってしまったケースを、わたしは数多く見てきている。
(ディーン・R・クーンツ著/大出健 訳「ベストセラー小説の書き方」朝日文庫)
・仕事からエネルギーをもらえるやりかたがある。仕事と対立しているとエネルギーをロスすることになる。
・創作にも経済的自立は必要である。生活レベルの向上は、執筆環境の充実につながる。最低限、机やパソコンは必要だろう。また東京の夏は熱帯並みに暑く、エアコンは知的生活に欠かせないアイテムである。また本が増えてくれば、書庫も必要になる。
・余るほど金があれば、不労所得で生活し、すべての時間を創作や知的生活のために使うこともできる。
・若い人にとって、貧乏は楽しいものである。若い人は貧乏をバネに飛躍することができる。しかし、30歳を過ぎて貧乏なのは問題である。貧乏も長く続くと心が卑屈になり、志もすり減ってくる。定職につき、経済的安定を得よう。生活不安は創作の大きな障害となる。借金がある場合は、必ず全額返済しよう。
・ぼくの場合、約15年間、ずっと貧乏でした。アホな人生です。同じように不器用な人生を歩んでいる方にぼくがいえるのは、今の苦しさがあなたの才能を磨いているのだということです。金がないことを嘆いてもしかたありません。精神論になりますが、とにかくすき間の時間をみつけて、歯を食いしばって、ひたすら創作するしかないのです。
自己関与
・創作には「自己関与」が必要である。
・「自己関与」とは「自分の人生を、自分のものとして取り組む」こと。もっとわかりやすくいうと「自分のために生きる」ということ。
・たとえば、自己関与しない人とは、自分の人生に無関心で、他人や組織の考えに流されて人生を棒にふる人である。一見、利他主義(他人の幸福や利益を第一に考えて行動する主義)にも見えるが、自己関与がないなら、それは自分を偽っているだけである。やがては「仕事のために自分が犠牲になっている」と錯覚して、情緒不安定になったり、問題行動をおこすようになる。
・自己関与している人間は、自分が犠牲になっているとは感じないし、泣きごともいわない。
・エンターテインメントは「読者を楽しませること」が基本である。しかし「だれかのため」だけで、そこに「自己関与」がないと「一生懸命やっているのに評価されない」などという「甘え」に陥りかねない。「創作を好きでやっている」という気持ちを、つねに持ち続けたい。
・ボランティアも、奉仕が義務になると長続きしないそうだ。楽しんでやる人は、いつまでも続くらしい。